高齢者の筋トレ
こんにちは。sakanaです。
私は普段高齢者の方たちにリハビリの一環で筋トレをおこなっております。
今回はどのような目的でどのようにおこなっているか記事にしていきます。
リハビリするほうもされるほうも明確に目的を理解しておいたほうが良いです。
効果も出やすくなりますし、「何のためにやっているんだろう?」と不安にならないですしね。
専門用語は少なめにしています。
そもそも筋トレとは
Wikipediaによると「骨格筋の出力・持久力の維持向上や筋肥大を目的とした運動の総称。」と記載されています。
筋トレは筋肉の瞬発的力と持久力を鍛えるためにおこなうということですね。
簡単に筋肉の動かし方の種類を挙げるとすると「等張性収縮、等尺性収縮、等速度性収縮」の3つがあります。
等張性収縮
ダンベルをガシガシ動かすような運動で、関節と筋肉が伸び縮みする動きです。
メリット:
- 瞬発力、筋持久力両方の効果が期待できる
- 筋力以外に関節可動域、協調性(適した筋力を発揮する技術)の訓練にもなる
- 筋力以外に関節運動感覚が入力できる
- 一番なじみがありわかりやすい
デメリット:
- 痛みが発生する人には向かない(リウマチや変形性疾患など)
- 消費エネルギーが多く、疲れる
- 関節が変形している等の方へは向かない。痛みが発生、悪化させてしまうことがある
よくみられる筋トレはこれだと思います。健常な方では良いのですが、関節や心臓に制限がある方は注意しないといけません。
等尺性収縮
関節を動かすことなく筋肉を収縮させることです。
ちょっとイメージしにくいかもしれませんが、座った状態で膝を伸ばしたままキープすることや、ダンベルを持ち上げてそのままキープすることなどです。
メリット:
- 関節運動をしないため、関節が変形してしまっている人が痛みなくおこなえる
- 等張性収縮と比べ少ないエネルギーでおこなえる。手術後などに有効
デメリット:
- <関節可動域訓練にはならない
- 関節の感覚入力ができない
- 実践的な動作訓練にならない
- 麻痺の方には向かない
リウマチや変形性膝関節症の方に筋トレをおこなうならこれ一択ですね。
麻痺の人は長時間狙った筋肉を収縮することは難しいのであまり使用しません。
等速性収縮
マシンなどを使用して軽い負荷のなかで関節運動を一定のリズムでおこなうことです。ジムのような施設でおこなうことが多いと思います。
メリット:
- どちらかというと筋持久力の向上がみられる
- マシンがあれば一人でおこなえる
- 過負荷になりにくく、筋肉を傷めにくい
デメリット:
- マシンがないとおこなえない。
- 日常動作に似た動きはなく、実践練習にはならない
まとめ
筋肉を大きくして大きな力を出したい人は等張性収縮
関節が痛いけど筋力をつけたい人は等尺性収縮
自分で動き回れてどちらかというと持久力をつけたい人は等速性収縮
が向いてるのかなと思います。
どのような目的でおこなうか
一般的な目的としては
- 弱化した筋肉を強くすること
- 残っている筋肉を強くして他の筋肉を補うこと
- 関節、靭帯損傷、痛みを予防すること
といわれています。
しかし上記だけの考えではやみくもに鍛えることになってしまうので、専門家の意見を聞きながら筋トレした方が効果的です。
得意な筋肉ばかり鍛えてしまったら体のバランスが悪くなりますし、間違った方法でおこなうと体を痛めてしまう。筋肉がついたけど、実践で役に立たない。などのことが起こってしまいます。
私たちリハビリスタッフはどんな動作をするためにどこの筋肉を鍛えるか決めています。
今リハビリスタッフにお世話になっている人はぜひこの筋トレが何の役に立つのか聞いてみてくださいね。
筋トレの注意点
体のコンディションや筋トレの仕方によっては逆効果になってしまうことがあります。
以下の時は自分の判断だけではやめましょう
- 熱が38℃以上
- <安静時の脈拍が100回/分以上
- 下の血圧が120以上
- 上の血圧が100以下
- 著しい痛みがあると
- 麻痺が強い人筋トレをおこなうとき
上記の症状が常にある方はリハビリスタッフの指導のうえで筋トレした方が無難です。
せっかく体を良くしようと頑張っているに逆効果になってしまったらもったいないです。
余談ですが、筋肉を一切動かさなければ1日に約3~6%ずつ筋力低下し、約1か月で50%程低下します。
寝たきりで過ごす時間が長ければ長いほど、筋力を戻すことは大変になります。
病院で早期離床、リハビリをおこなうのはこのためです。
実践編~自主訓練が大事~
上記をたくさん述べてきましたが、実際どれくらいやればいいのか?と疑問に思うかと思います。
一般的には10回ぎりぎりおこなえる負荷(10RM)の筋トレを2.3セット、週に5回を推奨しているものがあります。(今回は詳しい回数については割愛します)
ただこれって高齢者の方は不可能だと思います。辛いのは嫌になっちゃいますし・・・関節に負担がかかる・・・、心臓にも良くないし・・・
なので私はその人の主観的な疲れ具合、痛みの状況、表情、バイタル状態をみながらおこなっています。
特にバイタルは数字で確認しやすいです。
例えば安静時血圧が110/60だった人に、腹筋運動を20回おこない血圧が130/80になった。主観的な疲れ具合は「ちょっと疲れたかな?」くらいの場合、
ちょうど良い負荷量かと思います。
これが腹筋運動10回おこない血圧が115/65であり、主観的な疲れ具合が「全然疲れてない」であった場合は負荷量が少ないと判断します。
これは大雑把な例です。本来は呼吸や表情もみつつ、疾患によってみるバイタルは変えております。
バイタルの基準値等は別の記事で紹介します。
高齢者の筋トレの量と頻度ですが、教科書には現実的な数字が載っていることが少ないです。
ある研究によると・・・
30分間の運動を週に2回おこなうと現状の筋力を維持できる。
30分間の運動を週に3回おこなうと筋力向上が見込める。
とされています。(大雑把ですいません。本当はもっと細かく書いてあります。
)
入院中であれば現実的な量ですが、退院後は難しいことが多いです。
自力でおこなえるケースは少なく、デイサービスで運動しても週2回程度。訪問のリハビリも合わせれば週3回の運動機会を維持できますが、介護度によって受けられるサービスの量は決まっています。
なかなかサービスだけでは足りないことが多いのです。
そうするとやはり自主訓練が大事になってきます。病院で教わった内容でもいいですし、訪問リハビリの人に教わったものでもいいです。
毎日までとは言わないので、2日に1回くらいは自発的に筋トレや散歩をおこなえると良いですね。
新人セラピストへ
患者に対してただなんとなく「筋肉が弱くなっちゃうのはよくないので筋トレをしましょう」じゃ必要性を感じず、やる気にならないことが多いです。
だって疲れることはやりたくないですもん(笑)
具体的な目標を持っていて、それに必要な筋トレなら頑張れますし、家族のために仕事・家事をしなければならない人はそれにつながる筋トレなら頑張れると思います。
しかし、そうではない人には筋トレをすることによってどんなメリットがあるのか?患者によって方法を変え、上手く伝えていくことが大事です。場合によっては一緒に考えることも良い方法かもしれませんね。
あとは『自分も筋トレを定期的する』ことは大事だと考えています。
「なんでそんなだらしない体している人に言われなきゃいけないの?」「あなたはやらないの?」と思われると信用されないことも時々あります。
「僕も頑張るので一緒に頑張りましょう!」これでうまくいくケースもあります。
いろいろ語ってきましたが一番大事なのは『楽しんで筋トレできること』だと思います。
セラピストと仲が良いだけで上手くいくケースはとても多いです(笑)
セラピストなるもの小手先の知識だけにとらわれずに、コミュニケーション面も磨くことで、最強のセラピストになれるんじゃないでしょうか?
参考文献